佐野市のフィルムコミッションから学ぶまちの魅力発信の形
10月24日、栃木県佐野市を訪れ、佐野フィルムコミッションについて視察を行いました。
説明いただいたのは、佐野市産業文化スポーツ部 観光推進課の担当職員の皆様です。
この度はお忙しい中、お時間頂戴しありがとうございました。
映像の力でまちをPR ― 佐野フィルムコミッションとは?
佐野市は、自然・文化・歴史の豊かさと首都圏からのアクセスの良さを兼ね備えたまちです。
こうした地域特性を活かし、テレビドラマや映画の撮影誘致を通じてまちの魅力を発信しているのが「佐野フィルムコミッション(FC)」です。
フィルムコミッションとは、映像制作会社に対してロケ地紹介や撮影支援を行う非営利の公的組織のこと。
撮影の円滑な実施をサポートしながら、地域住民の理解と協力を得る「橋渡し役」を担っています。
全国で約300団体が活動しており、栃木県内では「栃木県FC」「あしかがFC」などが代表的とのことでした。。

行政が担うからこそできる支援体制
佐野市では、平成21年に観光課内でFC業務を開始。
観光協会への委託を経て、現在は市役所観光推進課が直接運営しています。
現在は職員4名体制で、制作会社からの問い合わせは年間平均で約110件、撮影実施は約27件と高い稼働率です。
その魅力は、ワンストップでの無償サポート。
ロケ地提案、許可申請の仲介、エキストラ支援、ロケ弁の業者紹介などの支援を行っております。
また、職員が撮影に随行し、現場でのトラブル防止にも力を入れています。
ロケによる地域活性化と経済効果
佐野市では、ロケ撮影を通じて地域経済への波及効果も生まれています。
令和5〜6年度の撮影関連消費額は約400〜960万円に上り、宿泊・飲食・交通などに地元経済が潤っています。
また、人気ドラマ「テセウスの船」では、市内ロケ地が全国的に注目され、「聖地巡礼」として多くのファンが訪れるようになりました。
市ではロケ地マップの作成やSNSでの発信、キャラクター「さのまる」とのコラボ写真など、観光誘客につなげる工夫を続けています。

課題と展望 ― 持続的な運営に向けて
一方で課題もあります。
撮影は早朝から深夜に及ぶことも多く、職員への負担が大きいこと。
また、人気の高い「学校」や「病院」などのロケーションは、実際の施設では利用が難しく、廃校や閉院施設の活用が求められている点も挙げられました。
さらに、専門知識を持つ人材不足も課題であり、佐野市では地域おこし協力隊の導入によって体制強化を進めています。
羽島市が取り組むべき方向性
今回の視察を通じて感じたのは、「まちの魅力を映像を通じて発信する」ことは、思ったよりも身近で始められるということです。
特別な予算をかけずとも、行政主導で撮影支援を行い、SNSでの発信につなげることは十分可能です。
羽島市においても、
- 公共施設などをロケ地候補として整理・公開する
- 市職員や地域団体が連携した撮影支援体制を構築する
- 市の広報活動と連動して「フィルムツーリズム」を推進する
といった取り組みが現実的な第一歩となります。
映像を通じて“市の魅力を再発見する仕組み”として、フィルムコミッションの導入を検討する価値は十分にあると感じました。
佐野市の事例は、まちの魅力を“外から見つめ直す”ヒントに満ちています。
ロケ誘致は単なるPR活動ではなく、地域経済の活性化・市民の誇り醸成・新たな観光資源の創出につながる取り組みです。
羽島市でも、「ロケのあるまち」「撮影でつながるまち」を目指していきたいですね。



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